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TetraBase 80 Swing

  • 2018/3/12:コラム掲載

振動エネルギーが霧散する、驚くべき変化

HiFiStay、TetraBase 80のニューモデル、TetraBase 80 Swing

HiFi Clubのコラムを翻訳掲載


振動(vibration)は定在波(standing wave)と共に、オーディオファイルの悩みの定番である。
定在波は四角形の部屋に内在する固有周波数で、音源から出ている周波数がこれと一致すると、ディップとピークを起こし音を歪ませる。各種の音響分散板と吸音材、ベーストラップを壁と天井、コーナーに投入する理由だ。
振動も質量を持つ全ての物体が直面する問題で、オーディオではこの振動が音質を歪曲させるという点で悩みの種だ。
物理学の最前線に立つターンテーブルをはじめ、電気エネルギーが運動エネルギーに変わるスピーカー、モーターが入ったCDプレーヤーやトランスポート、トランスフォーマーが入ったアンプもこの振動から無関係ではない。

振動に関連して個人的な想い出がある。よくスピーカーユニットのネジを定期的に締めあげると音質が飛躍的に向上するという手法があるが、以前は鼻で笑っていた。
ところが駄目でもともとと考えて、六角レンチでたユニットにはめ込まれている4つのネジを回したら、しまった、なんと2周も回ってしまった。
ガタガタで全く閉まってなかった。タイトな低域は構造的に不可能だったわけだ。
それだけコーン紙が前後に動く運動エネルギー、スピーカーエンクロージャー自体の振動は想像を絶するほど強力だ。

しかし、現在、私が自宅で使っている制震関連アクセサリーは、CDプレーヤーの下に3点支持で支えるインシュレーターと、ブックシェルフスピーカーを載せるスタンドだけだ。
インシュレーターを投入した時、音像がよりはっきりして音が更に自然に明瞭となり、色彩感の若干の増加を実感できた。
スピーカースタンドも似た效果が得られるが、帯域バランスとダイナミックレンジがより向上する印象を受けた。
重さが40kgを超えるフロアスタンディングスピーカーは、それらのアクセサリーは投入していない。これは手で押してもびくともしないほど重いので、エンクロージャー自体の振動はある程度カバーできると考えており、純正で付属するスパイクとシューズで大丈夫だと思えたからだ。たまにユニットのネジを締める程度だ。

ところが、このフロアスタンディングスピーカーも、一日も早く見直さなければならないようだ。
今回の試聴機、HiFiStayの’TetraBase 80 Swing’というシューズをABテストた結果、私の無知と怠慢をこれ以上放置できないと決断した。
細心のチューニングがされたHiFi Club試聴室で、それも重量が103kgもあるSonus faberの’Lilium’でさえ、このシューズを投入すると驚きべき音質変化を見せる。
テスト直後のメモをそのまま紹介すると、”味わい深い、奥深い、濃い、陰影が大きくなる、豊か、豊潤、スムース、破綻が無い。 音楽的。なによりも聴いていてずっと気持ちいい。爽快”

”HiFiStaySはスパイクとシューズ”

HiFiStaySは2002年設立のオーディオアクセサリー専門メーカーだ。
主に振動絶縁製品を作ってきたが、2017年のミュンヘンオーディオショーに出品したオーディオラック’Mythology Transform’は、優れたデザインと性能で海外ディーラーの好評を得た。
HiFi Clubで扱ったクランプ&レゾネイターも愛好家に多く愛用されている。
HiFiStayS製品が年々、性能はもちろんデザイン的にも完成度が更に高まっているのが人気の理由だ。

ホームページによると、現在販売中の製品は、オーディオラックの’Mythology Transform’をはじめ、インシュレーター’HardPoint Serene Z10’と’HardPoint TRINIA’、’Gyrotension Swing’、クランプ兼レゾネイター’Dharma’、そしてシューズ’Ballerino Soulier Swing’などだ。
今回の試聴機である’TetraBase 80 Swing’の前身である’TetraBase 80’は全てのスパイクに対応するという意味で、愛好家の間では”最後の王のシューズ”と呼ばれたりもしている。

それでは、ここで少しスパイクとシューズについて考察する。
スパイク(spike)は、本来のスピーカーやアンプの底がラックや部屋の床に完全に密着せず、水平になっていない現状を打開しようと誕生した。
3点支持の理論が誕生した決定的な理由だ。
それで先を尖らせてスピーカーとアンプが生み出す振動を’面’ではなく’点’に集中させて、消滅させるという手法も加えられた。
私もそう考えていた。

しかし、これは大きな誤解だった。
スパイクは振動を消滅させるのではなく、物体の質量を集中させ、むしろ底をつかむ役割をする。
運動選手のスニーカーに付くスパイクもこの原理だ。オーディオの振動エネルギーも、それぞれのスパイクに集中するだけで、決して自然には消滅しない。
よくスパイクの下に敷くコルクやゴムも、このような振動エネルギーを一種の運動エネルギーと熱エネルギーなどに変えて振動エネルギーを低減させるという科学理論の産物だ。

シューズ(shoes)は結局、スパイクにある一点の振動エネルギーを効果的に減らすために誕生したインシュレーター(insulator)の一種だ。
もちろん、先のとがったスパイクによる床の傷防止目的もあるが、音響的には’振動絶縁'(vibration insulation)がシューズの最も大きな存在理由だ。
もしシューズにこの振動絶縁効果が無ければ使う理由は無い。
スパイクがせっかく一点に集めた振動エネルギーを、相対的に広い自分の床面を通じて、むしろ分散させてしまうからである。

そしてオーディオの振動というのも、いくつかの場合がある。
まず、スピーカーやアンプそのものの振動もあるが、他のオーディオ機器による’外部振動’もある。
‘外部振動’は、スピーカーから出てくる空気圧による1次振動、底から伝わってくる2次振動に分けられる。
実際に、この振動の弊害についてどのように認識し、対処しているかが、オーディオファイルの内面と状況を計る尺度でもある。

“TetraBase 80 Swingに込められた振動消滅原理「Swing」

まず’TetraBase 80 Swing’は、滑らかで美しいアノダイジング処理のジュラルミン切削ボディが際立つ。
手で触れると、肌触りが非常に良い。
上段、中段、下段の色が異なっていて見た目も良い。
上段と中段は、互いにネジでつながっており、最大5mmの高さ調節ができ、スピーカーやアンプを正確に水平合わせできる。
有効高さは最小27mm、最大32mm。定格荷重は一個あたり80kgで、4点支持なら320kgのスピーカーやアンプも設置できる。
製品名に込められた’80’は外径サイズの80mmを意味する。

ところが’TetraBase 80 Swing’を触ってみると、ガタガタと揺れる。上のスパイクが触れる部分もガタガタと揺れており、下の薄い底とボディの間もガタガタ揺れる。
実際に、ソナスファベールの重い’Lilium’スピーカーの下に、この製品を4点支持で設置して、スピーカーを押してみると、ほんの少しだけ’動く’。
これは正しい。
‘TetraBase 80 Swing’に込められた振動消滅の原理は「振動エネルギーを運動エネルギーに変える」である。
HiFiStaySで’TetraBase 80 Swing’を「円形振り子運動」(spherical pendulum movement)によって「振動を消滅させる装置」(damped oscillation)と説明する理由だ。

構造を見ると、答えは簡単だ。
スパイクが置かれる上段スパイクベースと中段ボディの間にセラミックボールが3個入っている。
これによってスパイクに伝わった振動エネルギーが3つのセラミックボールによって運動エネルギー(振り子運動)に変わる。
だがこれで全てではない。
中段と下部ベースの間にセラミックボールが3個、更に広い円弧を描きもう一度投入されてある。
上部にあるセラミックボール3個で消滅しきれない振動を絶縁すると同時に、自分自身の振動すらもこれで消滅させるわけだ。

つまり、’TetraBase 80 Swing’はセラミックボール3個を2箇所も投入する二重レイヤー構造だ。
上段と中段、中段と下段がボールを挟んで2度も最小接点で接続するため、少しずつ前後左右上下に揺れるしかない。
いや、揺れなければならなかったのである。
製品名に付いた’Swing’という言葉は、最終的に振動エネルギーを運動エネルギーと、その過程で発生する熱エネルギーに変換し、振動エネルギーを減らすという表現に相違ない。

‘TetraBase 80 Swing’が前作と異なる点も、まさにこのセラミックボール3個によってスイング構造を2重に増やしたことにある。
‘TetraBase 80’も上段のスパイクベースと中段の間にはセラミックボールが真ん中に1つあったが、’Swing’では中段と下段の間はもちろん、スパイクベースと中段の間にもセラミックボールを3点支持方式で投入した。
他ブランドのインシュレーターにも揺れるという意味の’Sway’という製品があるのを見みて、このようなエネルギー変換の原理は振動の主要ファクターとして定着したようだ。

”試聴”

試聴には前述のとおり、ソナスファベールのフロアスタンディングスピーカー’Lilium’を使った。
ツイーター1個、ミッドレンジ1個、ウーファー3個、サブウーファーとパッシブラジエーターが各1個ずつ搭載されたこのスピーカーは、高さが160cm、重さが103kgにもなる大型機だ。
HiFiStayの’TetraBase 80 Swing’で聞いた時(A)と純正シューズで聞いた時(B)、そして再び’Swing’で聞いた時(A)を比較した。
アンプはDan D’Agostino ‘Momentum’シリーズのプリアンプと’M400’モノブロックパワーアンプを使った。

Michael Jackson-Heal The World
Essential Michael Jackson International

まず’Swing’を4点支持にした状態で聞く。序盤、子供の独白が明確で立体的に聞こえる。 続いて登場するマイケルジャクソンの声がかなりリキッド、滑らかできめ細かい。豊かに増えたというよりは、密度、つまり音の粒そのものがしっかりしたという印象。チャイム音はまるで金粉を蒔いたように倍音と残響が豊かだ。一言で色彩豊かな音。音像は膨らまずに適度に収まってクッキリしている。典型的なハイエンドの音だ。それとともに、音を一つ一つ積み重ねているレイヤーが素晴らしい。

純正に変えたら、、これは、ソナスファベールには申し訳ないが、音が浮ついている。もちろん’Swing’と比較しての話だが。序盤、楽器の音色は相対的に荒れて、子供の発音はあまり明らかでない。歯擦音が多く聞こえ、騒々しく感じる。再び’Swing’に変えてみると、最初からただただ’流麗’であり’鮮明’だ。確実にノイズが減り、全体的に音が美しくなった。チャイムは非常に柔らかく、かつ輝きを放っている。子供の発音はたどたどしくなく、自分が言うことをはきはきと話している。高音パートを担当するマイケル・ジャクソンは余裕と貫禄が感じられる。 ‘これがまさに音楽’だと満喫できた。

Paganini Ensemble-Paganini Violin Concerto No.2
Smoke Gets In Your Eyes

‘Swing’を使った状態で聞いた。バイオリンでどうやってこのような音が出てくるのかと思う程に弦の質感が生々しい。高音のかすかな音を連続して一定の厚さに弾き続ける姿がいい。エネルギーを凝縮した状態でかすかながらも、高域を正しく納めているのだ。まるで森の中でウグイスが遊ぶようだ。その後、低音パートでは、まるで優雅に翼を広げるようにキレのある躍動と表現を現す。音源の全てのディテールを全て捉えている。

純正シューズと変えると、音が全体的に出ている。粗野で奥深さが無い。ゆったりと余裕のある豊潤な味わいが消えたのだ。そして何か急用でせわしない印象も漂わせる。豊かさもかなり消えた。今ようやく暗譜してやっと舞台に立った演奏者たちのように、ドタバタと落ち着きがない。同じボリュームなのに非常に騒々しく聞こえる。音の終わりが鋭く尖って滑らかさがない。再び’Swing’で聞くと、ああ、最初の部分のバイオリンが投げかける質感そのものがあまりにも美しく素晴らしい。非常に細やかな粒子を四方八方に振りまいている。演奏者がようやく楽しく演奏している。

Maria Callas-Carmen Act.1 L’amour est un osieau
La Divina

カラスの声帯がリース期であることが分かる。最初に聞くやいなや、声にハリと艶、芯の強さも存分だ。無味乾燥とは縁が無い。ボーカルと伴奏楽器のイメージングとフォーカシングも隙がない。天と地のように変化するダイナミックレンジのおかげで聴いている間中楽しい事極まりない。

純正シューズと替えた。ボーカルと楽器の遠近感が目に見えて減った。楽器のダイナミックス自体も減少し、消極的で単調になった。音の終端がすっと消えず、代わりに鋭く金属音に伝える。再び’Swing’に入れ替えると、カラスと楽器の高低差もすぐに分かった。先ほどはカラスの声がこわばっていたが、今では完全に体がほぐれた。様々な音が降り注ぐ時も、寸分の揺れも混濁も感じられない。 固まり感が消失した。

Leonard Bernstein-Mahler Symphony No.2
New York Philharmonic

いつも聞いていたよりも左右ステージがかなり広い。弦の疾走がよく表現されており、チェロとバスが描き出す中低域は右のスピーカーの裏側で深い味を出してくれている。低域がこれほどがっしりと大きな味わいがあってこそ、やはりマーラーの2番だということだ。空気感も良く、楽器の木目も良く感じられる。

純正シューズに替えると、チェロとベースが前から出てきてステージが突然平面的に変わった。音量は少し大きくなったように感じるが、弦楽群の存在感はむしろ弱まった。再び’Swing’に変えてみると、中低音の粗い面がすっかり消えた状態で、現実のオーケストラのような音が出てくる。ノイズが完全に消え失せて、弱い音がより明確に聞こえる。全体的に荒れたり騒々しさが無い。ボリュームをもっと上げたくなる。これがAとBの最も大きな違いだ。

“総評”

振動対策が適切に整えられていないスピーカーは、このような状況にさらされる。

  1. 振動の逃げ道は床面しかないのに、スパイクとシューズが制震できなければ、その振動をそのまま自らが受けなければならない。
  2. 床から伝わってくる外部振動も状況が適切でなければ、やはりその被害をスピーカーがそのまま受けることになる。
  3. どちらの場合もコーン紙の運動量が大きい中低域がより大きな被害を受けるだろう。
  4. したがって、特に中低域の音は混濁し、帯域バランスはもちろん、サウンドステージとイメージも崩れるだろう。

‘TetraBase 80 Swing’を試聴しながら、以前にレビューしたARTESANIA AUDIOの’Exoteryc Rack’というオーディオラックが度々思い浮かんだ。このラックは基本的にオーディオ機器を上から保持し、ぶら下げる構造で、棚板を振るとブランコのようにやや動く。そうだ。やはり’Swing’も振動エネルギーを一種の振り子運動によって消滅させる構造だ。セラミックボール3個でスパイクに集中させた荷重や振動エネルギーを3点支持(1次スイング)した後、これを再び内部に装着したセラミックボール3個でもう一度’スイング’させている。そしてその聴感結果は、上記に最初に書いたとおり、驚くべきものだった。

“味わいがある。奥深い。濃い。陰影が大きくなった。豊か。豊潤。心地良い。スムーズ。騒々しさがない。音楽的だ。何より聴いていて気持ちがいい。爽快。”

筆者の考えは、もう他の所に行っている。もしこの’TetraBase 80 Swing’のスパイクを装着したCDプレーヤーやトランスポート、DAC、アンプに投入したら?今のプリアンプが高価なハイエンド製品に交換したような効果を得ることになることは明らかである。それほどに’Swing’が与えてくれた音質の変化は素晴らしかった。

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